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鶯谷駅から数分歩いたところに、旧平櫛田中邸という建物があります。
大正時代に、彫刻家・平櫛田中のアトリエと住居を兼ねて建てられたという伝統的日本家屋で、今は通常非公開ながらも、芸術文化教育活動などに利用されているそうです。

今回、その旧平櫛田中邸で上演される、あやめ十八番第九回公演『三英花 煙夕空』東京公演で、我らが島田大翼氏が主演!ということで、ドキドキしながら行って参りました。

ドキドキするんですよね、舞台とか観に行くの。
自分が立つのとは全然違う独特の緊張感なのです。


この「三英花 煙夕空」は骨董商と骨董品たちのお話だそうで、そんなざっくりとした前情報を握りしめて会場へ向かいました。

スマホのナビどおりに進むと真っ暗な墓地へ入ったものですから、またえらく趣があるなあ、すごい演出だなあと驚いておりましたら、建物の裏手へわざわざ行ってしまったようで、ちょっぴり怖くも恥ずかしい出来事でございました。



表の入り口に着きまして(奥が旧平櫛田中邸です)

古い日本家屋に探検欲をぐりぐりと刺激され、「まっくろくろすけ出ておいでー!!」などと叫び出そうとする自分を止めるのに苦労しました。


会場は、こんにゃく座のBスタジオよりも小さな四角い空間の、三面に一列ずつ…全部で二十脚ほどの椅子が置かれたきり。
正面に少しの楽器が並べてありますが、それだけです。

少ない(客席が)…、そして近い(演技エリアが)…、と、またドキドキが高まります。

出演者四人のお芝居とはいえ、こんな少人数のお客でいいのか!?贅沢過ぎないか!?

などと考えていたのも束の間、作・演出の堀越涼さんの前口上から、みるみるうちに物語へ引き込まれてしまいました。


小さな空間の中で、声が混ざったり響いたり弾かれたり入れ替わったりして、とても興味深い進行。
登場人物が話しているのに話していなかったり、なんと説明してよいのやら、難しいのですが、とにかく面白かったです。

自分が事件の目撃者になったような、骨董商の人生を辿っているような、骨董品たちの生き様を記した書を読んでいるような、不思議な感覚でした。
ドス黒いものを見せつけられているのに謎の心地良さがあって、難しい言葉だらけなのにすっと入ってきて。

とてもシンプルな照明で、舞台セットもほとんど無いし、出演者も四人だけ。記憶の中の話や場所の違う話など入り組んだ物語なのに、場面の切り替わりを巧みに魅せてくれて、今何を話しているのかはっきりわかるのが本当にすごいなあと後からやたら感心してしまいました。


島田さん演じる尼子鬼平は盲目の骨董商。見えていたから見えなくなり、見えないからこそよく聴こえるという人で、島田さんの雰囲気ある話し方は、こんな喋り方の人は多分実際にはいないはずなのに、不思議と本当に今そこで鬼平が生きて語り、喜び、苦しんでいるのを目の当たりにしているような感覚にさせてくれました。



真理を追究する探偵であり、殺人事件の容疑者であり、カウンセラーでもある悪党…そんな印象。言葉の発し方はもちろんのことだけれど、「聴く」という姿勢がきっとすごく大切で、島田さんはそれをとても自然に、けれど貫いて魅せてくれたように思います。ただただ、物言わぬ物の声に耳を傾けるということ。

自責の念に駆られる大脇差に「けれど確かにお前は二年の間この家を守ったのだ」というようなことを言う場面では涙が出てしまいました。
その言葉の温度や赦されるという感覚に、私も骨董品になってこの人に話を聞いてもらいたい、と願ってしまい、けれど見ているうちにそう願った自分を呪いました。くぅー!!

この作品は大阪でも上演されるのですが、大阪公演では鬼平役は作・演出の堀越さんです。私は堀越さんの舞台を拝見した数はまだそんなに多くないのですが、そんな私が想像してみても、なんというか、すごく、とっても、ぴったりです。堀越さんの手によって、堀越さんが演じるために生み出された役。そんな風に思わされてしまう何かを感じます。見てみたい。
しかしそんな風に思わされてしまう役を、島田さんは確かに鬼平が存在しているように、何の淀みもなく演じていました。島田さんにもぴったりだなと思いました。ほんとうにすごいです。ほんとうにすごいという以外にこのことをぴったりあらわす語彙力が自分に無くて悔しいです。



他にも、壷めっちゃいい奴!!とか、幽霊絵は本当は怖くない、美しく優しく哀しいだけ…とか、『なぞなぞチェック』私も持ってたし今も多分実家にある!とか、たくさん思ったことはあるのですが、あととにかく言っておきたいのは、「吉田能さんすごい」です。

突然ですが、こんにゃく座の演目に出演されているピアニストさんはピアノを弾くだけでなく、台詞を言ったり、他の楽器をやったり、演技をしたり、色々すごいんですよね。
歌役者として、そういうピアニストさん方と舞台を創れることをいつも誇りに思っています。

それをどうか理解した上でお読みください。

吉田能さんすごい。

いや、だってね、出演者四人って聞いてたんですよ。
吉田さんは作曲家で音楽家で…そりゃこれまでも座日記に書いたことのあるとおり脚本や演出やお芝居もされてますけど。
チラシにだって《出演》のとこでなくて「《音楽》吉田能」って書いてあったんですよ。

それなのに!めっちゃ喋ってるし!!すごい動きしてるし!!物語に音を添えて色々引き出されてましたけど!!

名曲つくれて演奏できてお話書けてお芝居できて動けてもう何なんですか。何者なんですか。

わけがわからなくてどうしようもないからとりあえず落ち着くために今回使ってた楽器の写真撮らせてもらったんで見てください


左に写ってるのが吉田能さんの手足です


取り乱しましてすみません。

そんなこんなで、大変に長い文章になってしまいましたが…

小さな頃によく家のミシンや洗濯機や枕に人知れず話しかけていたことを思い出したりして、返事は無かったけれど、きっと私の気持ちは伝わっているはずだと信じていたあの頃の私が、なんだか今になって救われたような、そんな気持ちになれた作品でした。

もったいないと思ったあの客席数も、あの空間だから共有できる空気を感じ体験できたんだなあと納得しました。

色々なものがぎゅっと詰まった充実の時間をありがとうございました!!



『三英花 煙夕空』出演者のみなさま(写真:下田直樹様)

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無題
幽霊絵の掛け軸(お駒)、大脇差(にっかり平左兼正)、副葬壷(三彩梅花紋六耳壷)など、人間の役者によって演じられる三品の骨董のそれぞれが、個性があり、どこかいじらしいところもあったりして、とても愛着がわきました。
盲目の骨董商、尼子鬼平が骨董たちと対峙する中で少しずつ物の怪めいた印象を強めていくように見えて「物である骨董の方がよほど人間らしい。」と感じたり、一方で、尼子鬼平の複雑な性格に、人間のもつ奥行きを感じたりしながら観ていた。

役者それぞれの演技のみならず、読経の声や、夏の庭の虫の声などの音の扱い、セリフを背後にいる人間に話させることで演じている人間を操り人形のように見せる演出などの要素も、演じられる会場である平櫛田中邸の趣とも相まって、年を経た古物たちが語りだすという非現実的な設定に説得力を持たせていたように感じます。
コルシカ 2017/10/09(Mon) 編集
コルシカさま
足をお運びいただき誠に有難うございました。お陰様でなんとか無事終えることができました。これからも色々観ていただけますよう精進いたします。どうぞよろしくお願いします。
島田大翼@尼子鬼平 2017/10/13(Fri) 編集
島田大翼@尼子鬼平 さま
返信ありがとうございました。あの不思議な空間ですごく豊かな時間を過ごしたことを思い出し、改めて、観に行ってよかったと思いました。
公演が続いていることと思いますが、お身体に気を付けてがんばってください。
(最初に記事を書いてくださった熊谷さん、どうもありがとうございました。)
コルシカ 2017/10/15(Sun) 編集
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